チーターさん、こんなロープで本当に大丈夫ですか?
大丈夫大丈夫、切れませんよ。
この足場も風でグラグラ揺れてますよ。途中で崩れたりしませんか?
大丈夫ですって。わたしを信じてください。
でも、本当にやるんですか?
ガゼルさんも今精神的にすごく辛いでしょ? きっとこれがうまくいったら楽になりますって。
いや、特にぼく、今辛いと思うようなこと、特に思い当たらないんですが……
大丈夫、やったらきっとスッキリしますって。じゃあ行きますよ!
ちょ、待ってって!
チーターさーん、ガゼルさーん、そんな高いところで、何やってるんですかー?
あ、よっしーさんこんにちは。見ての通り、バンジージャンプです!
は?
だから、バンジージャンプです!
た、たしかによくみたらガゼルさんの足にロープが……
っていうかそれ、バヌアツ共和国の原住民がやってるオリジナルでトラディショナルな方のバンジージャンプじゃないですか! よくやぐら組んだな!
こういうの。(※脚注)
でも、いきなりなんでバンジージャンプを?
最近オミクロン株の影響で株価が急落してるじゃないですかー。
た、たしかにそうですけど……
評価額が下がるのが見てられなくて毎日辛いので、バンジージャンプで強烈な体験をして、心を鍛えることにしましたー!
ちょっと待って、だからぼくは特に辛くないですって! しかも、なんで飛ぶのがぼくなんですか?
ほら、わたしネコ科じゃないですか。このぐらいの高さならロープなしで落ちてもたぶん平気です。これじゃぜんぜん強烈な体験じゃないじゃないですか。
ならどうしてバンジーにしたんだ!! 最初から自分で強烈な体験できるやつにしろ!
ふたりとも、努力の方向間違ってるよー!! 危ないから早く降りて……
どん!
ギャーーーーー!!
ぷら〜〜〜ん
10分後
どうでした、バンジージャンプは?
なんというか、こう、心が無になりました。もう何が起こっても怖くないです。
それは何よりです。偶蹄目ウシ科の動物でバンジージャンプを飛んだのは、たぶんガゼルさんが世界で初めてだと思いますよ。自慢していいと思います。
宙を舞うガゼルさんを見ていたら、なんだか私まで気持ちがスッキリしてきました。心が洗われるようです。
ところでよっしーさん、こういう相場の下落時ってどうしたらいいですか?
できればそれ、バンジージャンプを決行する前に相談して欲しかったです。
まぁ、貴重な偶蹄目ウシ科の世界初バンジーを目撃できたから、いいじゃないですか。
相場が下がっているときの考え方について
まず、気をつけなければいけないのは短期投資をしている人です。日常的に銘柄の売り買いをしている人ですね。
日常的っていうと、1時間に1回ぐらいですか?
前にも言いましたが、それは依存症ですよ。ざっくり、月単位で売り買いをしているなら短期投資のスタイルと思ってください。
短期投資の場合は、確かに大きな下落の時は損切りも視野に入れた方がいいです。短期投資の上手い人は、「20%以上下がったら売って、次のチャンスを待つ」などのルールをしっかり決めています。
あー、それ、よく聞くけど一回もできたことないやつです。
そう、実はチーターさんみたいな人多いんですよ。
損切りって、言うほど簡単じゃないんです。いくらルールを決めていても、いざ売ろうとすると心理的な抵抗が出てしまって、できなかったりするんです。
わたしだけじゃないんですね。よかった! これからは安心して放置します!
みんな無理だからって、最初から放置するのもどうかと思いますよ。
それよりも、ぼく個人としては短期投資自体をあまりお勧めしていません。精神的に削られます。
私のように、高度な精神修養が必要になってくるパターンですね。
いや、自分で飛んでねーだろ。
じゃあ、次に、中長期投資の場合を見てみます。毎月や毎年一定額の資産を買って、そのまま持ち続けるようなスタイルですね。ぼくもこっちです。
中長期だと、なにか心構えが違うんですか?
これまでも何回かお話ししていますが、目線が10年単位の中長期であれば、こう言う下落時時も基本的にほっからかしでOKです。アメリカ経済などのように10年単位の長期で見たらゆるい右肩上がりで上がっているような相場では、このような一時的な下落があってもほぼ回復しています。
ちょっとここで、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」の、ここ5年の動きを見てみます。
この5年で、2回ぐらい目立つ下落が発生しています。ひとつは去年のコロナショック。もうひとつ、コロナショックほどじゃありませんが2018年の10月〜12月に、いくつかの原因が重なって株価が大きく下落したことがありました。
でも、いずれもその後回復していますよね。
確かに、下落前より上がっていますね。
この5年だけじゃなく、これまでのさまざまな経済危機でも同様の動きでした。ということは、今後同様のショックが起こっても、同じような動きになる可能性はかなり高いと見ています。
なるほどー。下落も一時的なものだと考えることができるんですね。
特に、毎月一定額の積み立てを行なっている場合(ドルコスト平均法)は、相場の下落は逆にチャンスと考えることもできます! 毎月の投資額が一定なら、相場が下がるほどより多くのユニット数(投資信託の取引単位)を購入することができます。
ある意味、ボーナスタイムですね。
そうそう。そう考えたら気持ちも楽になりますし、実際お得です。
ってなわけで、ぼくの個人的なアドバイスは「下落時はボーナスタイムだからだまって見とけ!」です。バンジージャンプなんか、やる必要ありません。分かりましたか?
はーい。
分かればよろしい。
ところでチーターさん、高いところから落ちても強烈な体験をすることはできないんですよね。
ぶっちゃけ、そうですね。
分かりました。じゃあチーターさん、これを取ってこい!!
ひょいっ
おっ! 肉だっ!
シュタッ!
ドサッッッ!!
チーターさん、まんまとぼくの仕掛けた落とし穴にかかりましたね。
い、いつの間に……!
さっきチーターさんがよっしーさんの説明を聞いている間に準備しました。じゃあ、これから穴を埋めていきますから窒息する前にがんばって出てください。
ギャーーーーー!!
(ガゼルさん、ときどき過激なことするよな……)
※この話は投資知識を元にしたフィクションです。投資およびバンジージャンプは自己責任でお願いします。
※上記はたとえ話ですが、バンジージャンプの起源はバヌアツ共和国にあるペンテコスト島で行われていた通過儀礼「ナゴール」(ランドダイビング)と言われています。なお、本文中の写真はちゃんと使用許可を取ったものを使っています。
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